キドリハ通信 KIDOREHA BLOG
脊髄損傷者の不妊治療。事故から5年後の今、「受傷~不妊治療~出産」までを振り返る。 2020年5月30日(事故から5年と55日目) 2020年05月30日 14時49分17秒
< はじめに >
夫:木戸俊介(2015年4月受傷:脊髄損傷Th12・完全損傷) 「脊損者の不妊治療、出産」というテーマで特に多いのは、 「脊損者の妻ですなんですが…」とか、 「脊損者の彼氏がいるんですが…」 という相談が妻の方に寄せられます。 やはり、(特に女性は)一番相談しづらいテーマですし、 周りの方、健常者のパートナーをもつ知人には共感を なかなか得られず相談しづらいようです。 一方、情報発信している人も、ほとんどの人が 「子どもができた!」という感動をはじめ、 語られているのは素敵な部分がほとんどなので、 一番聞きづらくて、一番知りたい情報だからこそと、 妻の発案で、我々の経験を細かく記録に残して、 発信しようと決めました。 ハッキリいって、葛藤や不安、試行錯誤、クリニック探し。。。 道のりは、決して平たんではありませんでした。 でも、だからこそ、自分たちの経験を共有し、 できる限り多くの人の選択肢が増えることを 切に願っています。 ===================== 妻:木戸彩より 夫が事故をしてから5年経った今、私たち夫婦は かけがえのない宝物と一緒に人生を歩んでいます。 この6月で2歳になる息子です。 胚移植を経て、2017年の10月に妊娠することができ、 2018年の6月に生まれました。 もっと早く、情報を必要としている方に この情報を届けられたら、と思っていたのですが自分の 想像を超えた複雑な医療技術について伝え方にも悩み このタイミングになってしまいました。 日頃からSNSやメールでパートナーが脊損者である という女性何人かから、日頃脊損者の不妊治療についての 質問を多くいただくようになり、少しでも私たちの経験が 役に立つのなら、と情報発信を決めました。 私の夫が脊損になった当時(2015年)は、 インターネットで情報を探してもなかなか実体験や自分の 知識で検索できる範囲の情報が少なく、 様々な医療従事者の方にヒアリングしながら 自分たちなりに納得できる形で不妊治療を進めてきました。 その時の私たちの実体験をもとに書きたいと思います。 今現在、車椅子のYoutuberの方やインスタグラマーの方が 脊損者の為になるたくさんの情報を発信されており、 今後もっと情報は透明化していくと思っています。 また、ありがたいことに医療技術は急速に進化しています。 2015年から医療は着実に進化し続けていて状況は 変わっていると思いますので、もっと良いやり方が あるかもしれませんし、やはりその方の障害の状況や気持ち、 タイミングによって私たちのやり方が全てではないと思います。 私たち夫婦も経験者ではありますが 医療知識に関しては素人です。知識が完璧でなかったり、 言葉足らずな表現があることもお許しください。 ですが、私たちの実体験を知ることで、 より不妊治療についての理解が深まり、 「悩んでいるのは自分だけでない」と感じる人がいるのでは、 そういう方の力になれるのでは、と思い 実体験を書くことにしました。 また、今は状況も違うのかもしれませんが、 まだまだ脊損者の不妊治療については医療業界の方々の 中でも知識が一般化していない部分があると思います。 (少なくとも、受傷した5年前~ 出産した2年前まではそうでした。) 僭越ながら、医療業界の方にも、私たちの情報が 情報に困っている方の参考になればと思っています。 先生方の許可を取って病院名も公表しています。 いずれも私たちが実際に通い、脊損者の不妊治療の 経験がある病院ですので、質問や相談をしたい方がいれば 力になっていただけると思います。 しかし、実体験から思うことなのですが 不妊クリニックに関してはやはり先生との相性やアクセス、 経済的なことなど色々な観点、直感などがあると思いますので それぞれの考えや気持ちを大切にして 自分に合う先生を選ぶことをおすすめします。 不妊治療は短距離走ではありません。 マラソンのように、長い道のりを一緒にパートナーと 先生と走っていかなければなりません。長い間通い、 本当に自分が信頼できる先生を見つけてください。 大切な病院選びです、必ずご自身で決めてくださいね。 不妊治療は、カラダの面でも、ココロの面でも、 お金の面でも、辛いことが多いです。 私も、本当に辛くて泣いた日もありました。 希望に満ち溢れた不妊治療も、体外受精となると高額で、 子供を授かれなかった時のことを考えると家計に大打撃です。 そういう意味でも、覚悟と勇気のいることです。 そんな心折れそうな時は、 「どんな状況であっても、挑戦できる状況があることが あることはありがたいということ」 を少し考えてみてください。 私も調べた中で感じたことですが、 昔は、今のように全員が不妊治療を受けられるような 状況ではありませんでした。 クリニックもかなり少なく、 今よりも高額で諦めた方も多かったのだろうと思います。 過去の色々な方の、色々な研究のおかげで不妊治療が できる世の中になっています。 私は不妊治療中、辛いことがあったら、 「受けられるだけでも自分は幸運だ」、 そんな風に自分にささやき、慰めていました。 そして、絶対に悩んでいるのは1人じゃないということ。 不妊クリニックに行けばわかりますが、 今も、脊損者でなくてもたくさんの人が不妊クリニックに 通っています。SNSでたくさんの出産報告を見ると、 妊娠できるのが当たり前、と感じられる方も多いでしょうが、 実際に不妊治療をしている方は想像しているよりも 多いんです。 体と心にストレスのかかる不妊治療。 ですが、「子供を授かれる方法がある」と 聞いたときは本当に嬉しく、絶望の闇の中で 小さな希望の光を見つけた気分でした。 健常者の方でも不妊治療11回めで授かった、 という方もおりますし、代理出産を経て子供を 授かった人もいます。 人生は本当に何が起こるかわからないものなので、 簡単なことではないということも、もちろん わかってはいますが、うまくいかなくても 自分を責めたり周りを責めたりして欲しくないな、 と思っています。 もし、不安で話できる人がいなければ、 私たちでよければ相談に乗りますのでいつでも おっしゃってください。専門的なことはお答えできない部分も ありますが、だれかに話すと気持ちが楽になることもあります。 それでは、早速ですが次の記事にお世話になった病院と それぞれの経緯を書きたいと思います。 私たちの妊娠・出産については、VERY 2018年4月号 「家族のコトバ」に掲載いただきました。
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