キドリハ通信 KIDOREHA BLOG
脊髄損傷者の不妊治療 <体験談> 2020年05月30日 15時29分12秒
私たちの不妊治療について こちらに記載したいと思います。 前の記事「はじめに」もぜひ参考に していただければと思います。 私たちの場合、途中転居したこともあり お世話になった病院が関東と関西にあります。 また、私たちの試みとして、受精タイミングを 変えた胚移植にも挑戦したので、少し経緯が 複雑になっています。 わかりにくいところもあるかとは思いますが、ご了承ください。 私たちの記憶に基づき記載しておりますが、 情報について専門家の方でご意見・アドバイスや 助言がある方は直接ご連絡いただけると嬉しいです。 < お世話になった病院 > 今回、たくさんの先生にお世話になりました。 気持ちに寄り添い、全力を尽くしてくださった 先生方に本当に感謝しております。 ありがとうございます。 ◼︎関東 ・横浜市立大学付属病院(TESE / 横浜) https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/ →東京に在住していた時にお世話になった病院です。 また、こちらの病院と一緒に海老名の不妊クリニックに 精子を保管し、お世話になりましたが 家族の事情で神戸に戻った為、そのあとは下記の病院で お世話になりました。 ◼︎関西 ・ゆたかクリニック(TESE/ 大阪・京橋) http://yutakaclinic.jp/ ・山下レディースクリニック(神戸・三宮) https://www.ylc.jp/ < 私たちの経緯 > ① 情報を集める ◼️2015年4月〜 夫の入院(急性期病院) (入院期間:3ヶ月) ・ICUから一般病棟に移り、 今後子供を授かることができるのか疑問をもつ ・自分でネットを中心に情報を集めるも、 なかなか見つからず。 ・転院先のリハビリ検討過程で、 各病院の先生にも出産の相談&ヒアリング。 ・脊損者の不妊治療について経験のある先生の情報を得る (神奈川リハビリテーションセンター 泌尿器科の先生より 情報を得て、希望をもてた。実はこのこともあり、 転院先を神奈川リハビリテーション病院に決めた。) ② 射精障害の状態を知る <夫:障害者> 脊損者の妊娠は私たちが考えるに、「自己射精 ができるかできないか」が、一番のキーポイントになります。 ◼️2015年7月〜 リハビリ病院へ転院(入院期間:8ヶ月) ・泌尿器科の先生が、複数の方法で射精できないか試してくれる 1. 電気マッサージ機による刺激 2. 直腸への電気刺激 ・上記の方法で夫は射精が不可能だったため、 泌尿器科の先生から紹介状をもらい横浜市立病院で TESE(無精子症や不動精子症、重度射精障害などの 男性不妊患者様の精巣から直接精子を回収する 手術方法、micro-TESEなど様々な技術がある)の 方向で検討。 この時点で体外受精による妊娠&出産が選択肢となる。 →ちなみに、上記の方法やなんらかので射精できた人は、 精子を出すことで新しい精子が精巣に作られるため、 元気な状態の精子を作り出すことができます。 一方で、精子が出せないと、精巣の中の精子の元気が なくなってしまいます。 この状態では、男性不妊の「無精子症」と同じ治療を 受けることになりますが、脊髄損傷者は神経障害により 精巣の温度を一定に保つことができず、生殖機能(精子) が減退していく、という説があり、 早期に精子を取り出すことを私たちはオススメしています。 オーストラリアで出会った車椅子の男性は、 受傷後10年以上経過した状態でTESEに取り組みましたが、 精子が見つからなかった、と言います。 (こちらについての見解は、あくまでも体験談で 専門の先生によって異なる場合がございます。 ぜひ担当医の先生と相談をして判断をしてください。) ▼詳細は記事を参照ください。 「脊髄を損傷したら、まずは精子の救出を。」 2017年6月7日(事故から2年と66日)」 https://rwpj.jp/blog/%E3%80%8C%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%82%92%E6%90%8D%E5%82%B7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%89%E3%80%81%E3%81%BE%E3%81%9A%E3%81%AF%E7%B2%BE%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%95%91%E5%87%BA%E3%82%92%E3%80%82%E3%80%8D2017/ ★夫:木戸俊介より、少し余談ですが・・・ 神奈川リハビリ病院の泌尿器科にて、 TESEを受けるに至るまで、様々なことを試しました。 (リハビリ病院にて) 1.電マを15分以上当て続けて勃起するか? (ほぼ自力で勃起するかどうか) ↓復活した友人います(私たちの間では伝説の男です笑) https://rwpj.jp/bbs/%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AErewalk%E7%AC%AC1%E5%9B%9E%E3%80%80%E6%B1%A0%E5%B1%B1%E3%80%80%E6%98%AD%E9%AB%98%EF%BC%88%EF%BD%83%EF%BC%96%E3%83%BB%E6%84%9F%E8%A6%9A/ 2.バイアグラ⇒薬で勃起するか。木戸は反応なしでした 3.電気刺激で勃起するか (神奈リハ泌尿器科。木戸は膀胱に感覚が残っていて、 電気刺激が痛すぎて断念。) 4.AVを見続けて勃起するか (脳性勃起を誘発できるか。 木戸は今でも続けているが勃起しない) ③ 体の状態を知る <妻:健常者> 健常者である私は、一般の不妊治療のプロセスと同じです。 自分の体の状態を知り、そもそも妊娠ができる状態かを調べます。 ・私(妻)は不妊専門クリニックにて診察、各種検査を受ける。 →体外受精となると、 卵子を取り出す必要があるので妻も検査を受け、 正常に卵子が取り出せるか、不妊要因がないかを チェックする必要があります。 →また、精子を取り出す病院(泌尿器科)と 不妊治療を受ける病院(不妊クリニック)は別のため、 取り出した夫の精子の確認(数や精子の動きの状態など) は不妊クリニックで行う。 よって、手術当日、横浜市立大学附属病院で 取り出した精子は私が不妊クリニックまで運ぶ必要が あると説明を受ける。 ・夫はリハビリ病院に入院中、外出許可をもらい 横浜市立大学附属病院にて診察、 精子を取り出す日取りを調整 ④ 精子を取り出す <TESE手術当日> ・手術当日。夫は全身麻酔で精巣を切り、 精子を取り出す。 ・妻は手術室の前で待機し、 手術直後取り出した精子を渡される。 (透明な小さなケースに入っており、 それを保存袋に入れてハンドキャリー。) ・横浜市立大付属病院から、 私(妻)が不妊クリニックへ直行、精子を運ぶ。 (普通に電車に乗って運びました。 本当に運び屋になった気分で、 落としたらどうしよう、とか、 本当にドキドキしました。) ・不妊クリニックで取った精子の 状態を確認してもらう。 →精子が生きているか、何個取れているか、 元気か、などの状態を見てもらいます。 その当時の先生によると若い人で受傷から 間もない人の場合は精子が多く取れることが期待できる、 とのことでしたが、夫の場合は精子が1つしか取れず、 とてもショックで泣きました。 これについては夫がもともとそういう体質だったのか、 脊損の期間に精子が元気で亡くなったのか、 明確な見解はありません。 しかし1つでも動いている精子が取れたことは 後から感謝してもしきれないほど ありがたいことでした。 ・私が卵子を取り、受精させるときまで、 取れた精子は凍結して保管。 <余談:精子が眠っている?!> 先生にお聞きしましたが、 ずっと射精していない状態が続くと 精巣で精子が眠っている状態になっていることが あるそうです。 よって、TESEで採取した精子を不妊クリニックで 初見で見ていただいた時は、全体的に動いていない 状態ではありましたが眠っているのかも? との見解もありました。 ⑤ 神戸の不妊クリニックに、転院 ◼️2016年 11月ごろ 家族の事情で神戸に転居。 ・東京に住んでいたが、私(妻)の母が病気を患い、 私が母のそばにいたいという理由で 私と夫、2人の故郷である神戸に引っ越す。 ・引越に伴い、神戸での不妊治療を検討。 転院先を医療従事者の友人から紹介してもらい、 精子の輸送方法などについて相談をする。 ・転院元の不妊クリニック(海老名)から転院先 (山下レディースクリニック)に、紹介状を書いてもらう。 ◼️2017年1月 神戸の病院 (山下レディースクリニック)に転院 ・精子を神戸へ輸送。 このとき、山下レディースクリニックの培養士の方 がかなり親身に相談に乗ってくれ、海老名の病院と 輸送方法について色々と段取りをしてくれて 非常に助かりました。 (不安だったので、何より心が救われました…!!) ・山下レディースクリニックから 「液体窒素充填済みドライシッパー」を転院元の 病院に送っていただき、そこに保管していた 凍結精子を入れて輸送しました。 →このときかかった費用はもちろん自腹になります。 (※当時の金額ですので消費税や医療制度の改定など、 今は変更されている可能性大です、 必ず病院に確認してください!!): 輸送業者による容器レンタル料など 39,420円 宅急便(横浜→神戸) 1,512円 ⑥ 不妊治療開始 ◼️2017年4月ごろ ・神戸へ引越しが完了。このタイミングで、 山下レディースクリニックにて、不妊治療を開始。 基本ここからは、男性の出番はない。 ・転院元での検査結果を提出し、 不足している検査を受ける。 ・先生とスケジュールを決めて、卵子を作るための ホルモン剤など投与。 →採卵→受精(この流れ〜妊娠までは、脊損か そうでないかに関わらず、一般体外受精の流れと一緒です。 ちなみに、「アンタゴニスト法」にて試みました。) ・卵子16個を採卵。私の年齢で平均だと約6〜7割は 受精するだろうと一般的に言われているそうですが、 私たちの場合はできた受精卵の数が少なく、 状態の良い受精卵は1つでした。 →これは、脊損が原因か精子か卵子のもともとの原因 なのかはハッキリとわからないそうです。 ⑦ TESE&採卵 2回目 ◼️2017年6月 2回目の試み ・できた受精卵が少ないため、 より、妊娠の可能性を増やすべく、 再度受精(TESE&採卵)を希望。 2回目の受精は、1回目とで受精のタイミングを 変えてみることを検討。 ・1回目は凍結した精子と卵子を組み合わせたが、 2回目は取れた精子と卵子をフレッシュの状態 (凍結せず生の状態) のまま受精させることを検討。 ・私の採卵日、夫のTESEの手術の日程をすり合わせ。 (取れた卵子と精子をそのまま受精させるため、 日程を同日に合わせる必要があった。) ・夫は、大阪、京橋にある「ゆたかクリニック」 でTESEを行った。 そのまま、スタッフの方が精子を山下レディース クリニックまで輸送してくれ、そのまま受精した。 ・フレッシュな精子を使うことで結果が良くなることを 期待したが、結果は凍結した精子での受精と変わらず、 できたのは1個だった。 (もともと過去のデータ的に、フレッシュと凍結した 精子とでは受精率は変わらないというデータは あったそうなのですが、データのサンプル数が 少ないだけではないか、と疑問をもち、 私たち夫婦はチャレンジしてみることを決意。) ◼️2017年10月 胚移植 ・できた受精卵を子宮に戻す。 ・他の受精卵、夫の余っている精子は凍結保管。 →妊娠判定陽性 ◼️2018年6月19日 息子を出産。 < かかった費用 > これは、住んでいる場所、 年収などによっても個人差があります。 木戸家の場合を、記憶と記録に 残っている限り整理して記載します。 ◼︎概算 TESE手術&精子凍結保存 +採卵&凍結保存+人工授精などで 100万円/年くらいかかりました(概算) ※手術の回数、どれだけの期間 精子や受精卵を凍結しておくかにもよる ※精子や受精卵は、いくつか取れたら 次回の不妊治療まで凍結しておくため、 保管のための更新費が精子と受精卵、 それぞれにかかります。 ◼︎補助金 ⇒自治体ごとに不妊治療の 助成金があるので調べる(病院で聞く)べき。 ⇒金額は自治体や年収により異なる。 木戸家(神戸市、年収は、前職を退職後 だったのであまり高くありませんでした) の場合は20~30万円くらいの助成金を いただきました。 以上です。 そして、この6月に、2歳の誕生日を迎えます。 妊娠⇒出産⇒子育てで、 さまざまな苦労はありますが、 それは、障がいに関係なく、 私たちだけではありません。 両親や家族、周りの方々に支え、 励ましてもらいながら、 奮闘する幸せを感じながら過ごしています。 リハビリも一緒ですが、、、 「歩けなければ、不幸。」 というわけではありません。 歩くためのリハビリや生き方に 選択肢があれば、前向きにチャレンジができます。 ですので、不妊治療についても、 少しでも多くの選択肢を知り、 自分たちに合った生き方を選択できれば、 悩みながらも前進できると信じています。 最後に。 今回の情報が、必要とする方、 または必要とする方の近くにいる方に 届くことを改めて願います。
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